0.前置き
前回の記事では、「科学的に美味しい炒飯とは何か?」について、美味しい炒飯の”定義”を考えました。
今回の記事では、その定義を沿って選ばれたのは、果たしてどんなお米なのか?を書いていきます。
この記事を書くにあたって、お米の性質に関する論文や記事をいくつも読み、場合によっては実際に調理しました。
それらの根拠をもとに、科学的な炒飯レシピを構成していきます。
この記事は、「ひたすらある科学的性質を優先したレシピでは、美味しい炒飯が作れるのか?」という実験です。レシピというより読み物として楽しんでください。
美味しい炒飯を目指してはいますが、機械的に定義通り選択していくので、美味しいの定義が間違っていれば、美味しい炒飯にはなりません。
そして定義を、
(ただし米どうしがくっついていない)
とします。ただこれでは具体的でないので、
→お米内部がα化し、表面がべたべたしない
②水分を最大限含む
→ぱさついてないご飯
③一般的に好まれる炒飯としてのお米
→炒飯についてのアンケートを参考
条件の優先順位は、①→②→③とします。
<条件①と②の意味>
炊飯前のお米は約75%がデンプンであり、炊飯後のお米は全体の約65%が水分です。よって、デンプンの変化である”α化”と、ご飯が含む”水分”を重視した定義としました。
また、”べたついていない”という条件は、最低限の炒飯らしさのためのものです。水分、α化を重視した結果「お粥で炒飯を作るべき!」という結論ににならないための予防です。
<条件③の意味>
”一般的に好まれる炒飯としてのお米”という条件は、”α化”、”べたつき”、”水分量”という条件だけでは選択できない場合のみ、最終的な判断基準として用いることにします。
また、ご飯の色や香りは炒飯にしてしまえば関係ないだろうと考え、条件に入れませんでした。
果たしてどんなお米、水が選ばれるのか?
項目ごとに選定していきましょう。
「炒飯のお米選び」
1.お米の用語
2.お米の種類は?
3.脱穀の割合は?
4.お米のブランドは?
5.新米か古米か ?
6.育った場所は?
7.収穫前の天候は?
8.保存方法は?
「炒飯のご飯の水選び」
9.pH(酸性・アルカリ性)は?
10.硬度(ミネラルの量)は?
「まとめ」
11.つまりどんなお米、水がいいのか?
<このページの流れ>
炒飯を定義にそって科学的に考えていきます。今回はお米と炊飯用の水についてです。
最初に定義したように、
①米内部:α化度が最大、かつ、米表面:べたついていないか?
↓
②水分を最大限含んでいるか?
↓
③炒飯用の米として人気があるか?
を考えながら、お米、水を採用していきます。
長文ですので、面倒であれば最後の11.つまりどんなお米、水がいいのか?だけ読んで下さい。
1.お米の用語
最初に、これからよく使っていく言葉について説明しておきます。
・硬さ:歯ごたえの強さ。
・付着:表面のベタベタ感。
・粘り:もちもち感。
・デンプン(お米の):アミロース、アミロペクチンという物質でできている。アミロペクチンが多いほど粘りが強くなる。
・α化:硬いデンプンが、水と熱により粘りのあるデンプンに変わること。
・老化:α化前の硬いデンプンに戻ること。
厳密さは欠きますが、専門用語は使わずに書いていきます。
2.お米の種類は?
お米の品種について考えてみます。
お米の品種は大きく下の3つに分けられます。
①ジャポニカ米:日本のお米はジャポニカ米の一種。粘りが強い。
②ジャバニカ米:少し細長い。あっさり。
③インディカ米:タイ米はインディカ米の一種。細長い。パサパサ。
この中のどのお米が適しているのでしょう?
結論としては、白米として食べる際に日本人が最も美味しい感じる日本米が属する、”①ジャポニカ米”がベストでしょう。
(日本人的嗜好ですが、日本人にとって美味しい炒飯を想定しています。)
科学的には、インディカ米は日本米に比べてα化の開始温度や、お米が冷えたときの粘りの増加が小さいため、味が劣ると言われています。
また、
「インディカ米であるタイ米を使用した本場の炒飯としてよく見かける。」
「世界的にはインディカ米が主流。よって美味しいの定義は多数はの意見を採用すべき!」
などの反論もあるでしょう。確かにα化度、水分の量を基準にするとジャポニカ米が優れていますが、インディカ米の良さもあります。
そこで実際にインディカ米(タイ米)で炒飯を作ってみました。
日本米に比べてタイ米は、甘味が少なく、パサパサした印象を受けました。
ただ、日本米にはない穀物らしい香りや、パラパラにしやすさ、炊飯時間が短く済むというメリットもありました。
今回の定義では選ばれませんが、炒飯をインディカ米で作る選択肢はアリだと思います。
そして、ジャポニカ米の中にも、
①もち米:餅に使われる粘りの強いお米。
②うるち米:一般的なお米。
という2つの分類もあります。
もち米は吸水性が良く、水分を多く含みα化度も大きいですが、米表面のべたつきが強く、パラパラにしにくいです。
よってもち米は”表面がべたついていない”という条件に反してしまいます。
もち米とうるち米は、水分とα化度ではもち米が少し優れていますが、パラパラ炒飯へのしやすさはうるち米が優れています。
表面がべたついているからと却下したもち米ですが、本当に炒飯にしにくいのでしょうか?
実際に作ってみました。
↑浸水時間なし、白米モードで炊飯
↑かなり混ぜにくい。全然パラパラにならない。
↑混ぜにくさのため、焦げる部分がでてしまった。
「めちゃくちゃパラパラにしにくいな・・・」と思いましたが、「調理法を変えればパラパラになるかも?」と別の方法も試してみました。
最もパラパラになるであろう方法、”卵とご飯を混ぜてから炒める”でパラパラ炒飯を目指しました。
↑卵を潤滑油としてもち米をほぐしておく。
↑炒めにくい・・・
↑結果パラパラにはできませんでした。もち米でパラパラ炒飯を作ることは至難の業だと思われます。
3.脱穀の割合は?
脱穀(とう精)とは、玄米の穂からお米を取り出すことですが、とう精の割合によるお米の分類は大きく3つあります。
①玄米:削っていないお米。栄養価は高いが、吸水率がやや低い。
→よって水分を多く含むという定義に反する。
②無洗米:精白米から更に”ぬか”という臭い層を取り除いた、洗う必要のないお米。
表面が必要以上に削られてしまっている。でんぷんまで削られているため、精白米より含める水分量が少ない。
→よって水分を多く含むという定義に反する。(表面にでんぷんがむき出しな分吸水速度は速いが、吸水量は少ない)
③精白米:玄米に対して、90~92%表面を削っている。最も一般的なお米。α化、水分の含みやすさに優れている。
「本当にパラパラに作りやすいのか?」という疑問を解消するために、実際に玄米で炒飯を作ってみました。(発芽玄米)
↑玄米の袋に書いていた通りに、30分浸水し、白米モードで炊飯をしました。(炊飯器)
すると炊きあがった段階から、「あ、これパラパラになるな」という感じで、実際に炒飯にしても、簡単にパラパラになりました。
↑ですが、玄米モードで時間をかけて炊飯した場合は、米粒が崩れている感じがありました。玄米の特有の香りや、米を包む皮のシャリシャリとした食感は新鮮でした。よって、発芽玄米を白米モードで炊飯すれば、パラパラ炒飯を作りやすいという点で、玄米もアリだとも思います。
4.お米のブランドは?
お米のブランド選びは一番迷うポイントかもしれません。
日本米には沢山のブランド米があり、それらの特徴は様々です。
それでは、定義とその条件の順に考えていきましょう。
お米選びの1つめの条件は、「米内部:α化度が最大、かつ米表面:べたついてない」です。
米内部のα化度が最大化を目指せば、もち米に近い性質、つまりアミロペクチンの多い粘りの強いお米を選ぶべきです。
しかし、米表面がべたついていないことを目指すと、タイ米により近い、アミロペクチンの少ない粘りの少ないお米を選ぶべきです。
2つの条件が相反するため、この2つ条件がベストなバランスのお米を選ぶべきでしょう。
ただ、最初の定義ではアミロペクチンの最適な量を定義していません。よって、ベストなバランスを具体的に決められないため、次の条件を考えることにします。
次に、2つめの条件、「②水分を最大限含む」を考えてみます。
水分量を多く含むためには、もち米に近い、アミロペクチンの多いお米を選ぶべきです。(そもそも定義の条件が良くなかったですね・・・)
しかしこれでは先ほどの条件、「米表面がべたついてない」に反しています。
(「α化度、水分量最大」だけを目指すのであれば、もち米を煮たお粥が最も条件通りですが、それでは炒飯用のお米として機能しません。)
よって、2つめの条件でも決定できませんした。
それでは3つめの条件、「一般的に好まれる炒飯としてのお米」を考えてみましょう。
炒飯に合うとされるお米について、論文やお米専門サイト等で調べてみました。
すると、「比較的粘りが小さく、硬めの触感」が炒飯に合うとされていました。(アンケート調査の結果)
ただ、硬さすぎ、粘りの弱すぎ(タイ米)も良くなく、コシヒカリより少し硬く、粘りが弱い程度という、微妙なラインが美味しいようです。
また、炒飯として美味しいお米は、すし飯としても美味しい傾向があるようです。よってすし飯として美味しいお米も探してみました。
調べた結果、”ササキニシキ”、”日本晴”、”秋晴”の3つを具体名として見かけました。
これらのお米の共通点は、粘りが少なく硬めの触感、あっさりとしていて脇役的な存在だということです。
(つまりα化度が高いお米は炒飯に向いていないということですね・・・。定義の仕方が良くなかった気もしますが、その改善はまた次回ということで・・・)
さて、この3つのブランドの中でどのお米を選ぶべきでしょうか?
炒飯としての評価が最も高かったのは秋晴だ、という文献もありました。しかし、現在秋晴を購入する方法を見つけられませんでした。
よって2択に絞られます。
”ササキニシキ”と”日本晴”を白米としての美味しさで比較ると、日本穀物検定協会は”ササキニシキ”をAランクとしていました(産地によりますが)。
これにより、お米としての美味しさは”ササキニシキ”が上と判断します。
(今回は数種類のブランド米を混ぜることは考えないことにします。(選択肢が増えすぎるので))
(白米として美味しいお米) = (炒飯としての美味しいお米)
ではないということです。「お米の美味しさを最大限活かす」という定義を、「白米として美味しい」と解釈するのであれば、特Aランクのお米がベストのはずであり、コシヒカリあたりを炒飯用のお米していたと思います
では、例えば龍の瞳というお米がコシヒカリの1.5倍大粒ですが、このような大粒米を炒飯用のお米とするべきでしょうか?
ここで思いつくのが、大粒米を炒める場合、加熱による脱水は小粒米に比べてどうなるのかという疑問です。
一見大粒米の方が、表面積が小さく脱水しにくそうです。
しかし、砂が岩に比べてすき間なく埋まるように、大粒米では米と米のすき間が広くなるはずです。すると大粒米では、鍋に直接触れ炒められる部分が減り、全体を炒め終わるまでに時間がかかり、加熱時間が増え、結果的に脱水量が多くなるかもしれません。
この疑問に対する論文が見つからず、またキッチンでの実験方法も思いつかなかったため、残念ながら今回は大粒と小粒どちらのお米がを選ぶべきかは保留にしておきます。
5.新米か古米か?
お米を選ぶ際には、収穫からの経過時間も気にする必要があります。
つまり、新米や古米です。
炒飯を古米で作ると良いいという人もいます。「古米は味が染み込みやすい」とか、「水分が少ないためパラパラにしやすい」とか。
しかし今回の定義で行けば、水分を多く含むお米を探しています。生米の水分量は新米で15%くらい、古米は12~13%くらいです。
また新米はもともとの水分量に加え、吸水性も高いです。古米は細胞の硬化のため吸水性が低いです。
6.育った場所は?
たんぱく質というと何となく身体に良さそうですが、お米の美味しさには悪影響とされています。たんぱく質が多いほどお米は硬く、味が悪いそうです。
ビニールハウスより田んぼで作った方がたんぱく質は少なくなるようです。
また育てる環境としては、窒素肥料の使用量が多いとお米が硬くなり、味も落ちるとされています。
7.収穫前の天候は?
米粒が成長する時期(9月くらい)の日照時間が長いほど粘りのあるお米(アミロペクチンが多い)になります。また日照時間が短いと、実りが悪く粘りの少ないお米になるようです。
ただ暑すぎるのも良くないため、適温で作られたお米を選ぶのがベストでしょう。
(私は)年によるお米のできは気にしたことがありませんでしたが、毎年出来にムラがあるようです。
8.保存方法は?
炊飯前には洗米により米表面のぬかをとりますが、保存の際はぬかが酸化を防いでくれているようです。そのままの状態で保存しましょう。
また他には、
・高温多湿を避ける
・空気に触れさせない
・古い米と混ぜない
などが、美味しいお米の保存に必要となります。
今度は”水選び”についてです。
炊飯用水について調べてると、記事や論文によって主張がかなりばらばらでした。
そのため、これから私が書く内容にも、間違いが交じってるかもしれません。見つけた方はコメントくださると助かります。
9.pH(酸性・アルカリ性)は?
炊飯水に最適なpH、つまり酸性・アルカリ性はどれくらいなのでしょうか?
まずはアルカリ性の水(pH7~)について調べてみまいた。
ある論文では、pH10程度のアルカリ性の水でご飯を炊くと、デンプンの”α化が促進”され、”老化を抑制”する効果があるとされていました。
また、「キリン アルカリイオンの水」の公式サイトでは、弱アルカリ性の水はお米の”膨張率を高める”効果があると紹介していました。その効果によって弱アルカリ性の水では、大粒でしゃっきりと炊くことができるそうです。(これは日本米穀小売商業組合の資料を元にした情報だそうです。)
次に、酸性の水(~pH7)について調べました。
すると、お酢を水で薄めた水でご飯を炊くと、”吸水性の増加”、”α化の促進”、”米粒の軟化”、”甘味の増加”といった効果があるそうです。
しかし、(1→)pH3(酸性)、pH8.5(アルカリ性)の水で炊いたお米は、米表面の付着性、つまりベタつきが増す(←1)という論文がありました。(*1参考:「米飯の成分および物性に及ぼす炊飯液pHの影響」,発表者:金成はるな様,大石恭子様,香西みどり様,発表:(一社)日本調理科学会平成29年度大会)
またpH3以上のの弱酸性でも、米表面の付着性があがるようです。
以上をまとめると、アルカリ性と酸性のどちらでも”吸水性の増加”、”α化の促進”が期待でき、しかし表面の付着性は増加するという特徴があります。
どちらも同じような性質がありますが、アルカリ性と酸性の”効果の度合い”に差はあるはずです。
そこでこれらの影響力の違いについて調べてみました。
すると、(*2→)お米の浸水時の体積増加量は、
アルカリ性水(pH9、10)
↓
水道水
↓
酸性水(pH3、4)
の順となるようです。
また、炊いたお米の面積の増加量を測定したところ、
アルカリ性水(pH9、10)
↓
酸性水(pH3、4)
↓
中性水
の順となったようです。
これらの結果から、アルカリ性の水の方がよく吸水し、大きく炊き上がることが分かりました。
また、(粘り強さ)÷(硬さ)の値が、
アルカリ性水
↓
酸性水
↓
水道水
の順に大きな値をとったようです。
硬さはpHが高くなると増加し、反対に粘りはpHが増加すると弱くなる傾向があるようです。
ただ、どこまでも増加が続くわけではなく、硬さのピークがpH8.9、粘りのピークはpH9.4でも最大となり、また(粘り強さ)÷(硬さ)の値は、pH9.4で最大だそうです。(←2)
(2参考:「電解水による炊飯特性の検討」,著者:小林健治様,土佐典照様,原安夫様,堀江修二様,出典:日本食 品科学工学会誌 第43巻 第8号 1996年8月,実験結果及び考察-2.白米の膨潤度試験(p.932),3.炊飯米の形状(p.933),4.炊飯米のテクスチャー(p.934))
このようにしてみると、アルカリ性の水の方が、α化度が大きく、水分を多く含むベストなお米に思えます。
しかし、アルカリ性の水は米表面の付着性が増加すると書きました。付着性が大きすぎると1つめの条件、”べたついていない”に反します。
弱アルカリ性の水で炊いたお米のべたつきが、炒飯を作る際に障害となるのか、実際に作ってみました。
見た目では分かりませんが、結果特に問題ないと感じました。というか、他の水に比べてアルカリ水の付着性の高さを実感できませんでした。
(炭を炊飯用水に入れて炊くと、水がアルカリ性になります。しかし、水が低温の炊飯前の段階では、水が酸性となります。アルカリ性の水で浸水すると、酸性よりもよく水を吸うため、やはりもともとアルカリ性の水で炊くことがベストでしょう。)
10.硬度・ミネラルの量は?
次は硬度・水に含まれるミネラルについてです。
(硬度とは、水に含まれるCaとMgの多さのことです。多いと硬水、少ないと軟水と呼ばれます。)
(3→)陰イオン(マイナスの電気を帯びている)のミネラルでは、
OH-(水酸化物イオン)
I-(ヨウ素イオン)
Cl-(塩化物イオン)
陽イオン(プラスの電気を帯びている)では
Li+(リチウムイオン)
Na+(ナトリウムイオン)
K+(カリウムイオン)
がα化の促進をしていると言われているようです。(←3)
(*3参考:「電解水による炊飯特性の検討」,著者:小林健治様,土佐典照様,原安夫様,堀江修二様,出典:日本食 品科学工学会誌 第43巻 第8号 1996年8月,実験結果及び考察-2.白米の膨潤度試験(p.932))
水に含まれているミネラルは、
Ca(カルシウム)
Mg(マグネシウム)
Na(ナトリウム)
K(カリウム)が多く含まれています。また水道水ではCl(塩素)も多く含まれています(東京では残留塩素濃度が0.01~0.04[mg/100ml]が基準)。
ほとんどの文献が、ご飯を炊くには軟水が向いているとしていました。(硬水で炊くべきとするものもありましたが、少数でした)
軟水、つまり硬度の低い水は、お米に浸透しやすいそうです。よってお米がたくさん水を吸い、加熱されることでα化度も高くなります。
ではなぜ硬度の高い硬水は、炊飯に向いていなのか。一番の理由はCa(カルシウム)にあるようです。
Caには炊き上がりをパサパサにする性質があるそうです。
硬水の中にもα化度がピークを取る硬度があるようですが、特に理由がなければ、そもそもCa量の少ない軟水を使用すべきかと思います。
またMgに関してもピークが存在するようですが、これもMgの量が少ない軟水を使用すればそもそも問題ありません。
これも諸説あり、硬度が低いほどお米に水が浸透しやすくていいとか、ある程度の硬度はあった方が美味しいようです。
さて、ここで疑問が生まれます。
α化度が高いのは、できるだけ硬度の低い軟水か、Cl-やK+などのα化を促進する物質の入った水か、どちらでしょう。
1つめの条件の”α化度”、”べたつき”を基準に考えると、どちらの水が優れているのか、文献を見つけられずまた実験での判別も難しいそうです。
2つめの条件の”水分量”については、Cl-やK+はα化の促進はしているものの、お米の吸水性を上げるとは書かれていませんでした。(見つけられなかっただけかもしれませんが・・・)
よって、より吸水性が高く、”水分量”が多い、「できるだけ硬度の低い軟水」を選ぶべきです。
よって、実際にどれだけ炊き上がりに差が生じるのか、(同一の炊飯方法で)3種類の水で炊いたご飯で炒飯を作ってみました。
↓↓↓「Contrex」↓↓↓
pH:7.4
硬度:146.8 [mg/100ml](硬水)
Ca:46.8 [mg/100ml]
Mg:7.45 [mg/100ml]
K:0.28 [mg/100ml]
↓Contrexで炊いたお米の拡大写真
↓↓↓「南アルプスの天然水」↓↓↓
pH:7
硬度:30 [mg/100ml](軟水)
Ca:0.6~1.5 [mg/100ml]
Mg:0.1~0.3 [mg/100ml]
K:0.1~0.5 [mg/100ml]
Na:0.4~1.0 [mg/100ml]
↓南アルプスの天然水で炊いたお米
↓↓↓「アルカリイオンの水」↓↓↓
pH:8.8~9.4
硬度:59 [mg/100ml](軟水)
Ca:1.3 [mg/100ml]
Mg:0.64 [mg/100ml]
K:0.16 [mg/100ml]
Na:0.8 [mg/100ml]
(食塩相当量:2.0 [mg/100ml])
↓アルカリイオンの水で炊いたお米
↑Contrexで炊いたお米の炒飯
↑3種類のご飯を食べ比べ。一度冷凍し、同時に解凍。ラップの下にお米の種類が書かれており、入れ替えて区別がつくか食べ比べました。(左から順に、Contrex→天然水→アルカリイオン水)
正直な感想は、ほとんど違いが分かりませんでした。
強いて言えば、アルカリイオン水では、少しベちゃついているような、粘りと付着性が高めに、また少し白っぽく見えました。
硬水で炊飯すると黄色く変色すると言われていますが、Contrexで「若干黄色いか・・・?」程度でした。
交互に食べつ比べ続けていると、Contrexでは比較的味を感じて、アルカリイオン水では味が薄く水っぽい感じでした。
が、全体的にやはり違いはほぼ分からず、私程度の味覚の持ち主には炊飯水の違いはほとんど影響がないのでしょう・・・。(分かる人には分かるはずなので、やはり軟水、弱アルカリ性がいいとは思いますが。)
また、水道水のpHについてはpH 5.8 ~8.6の範囲だそうです。
また水道水は衛生管理のため、塩素、つまりα化を促進する物質が含まれています。
つまり地域によっては、水道水が軟水でpHもアルカリ性で、かなりと炊飯用の水として優秀な地域があるはずです。
更には、水道水で炊いたお米が一番美味しいとする論文もあります。しかし水道水にもデメリットはあり、カルキ(塩素)臭さや、地域差(沖縄は硬水など)、季節ごとに水質が変わる(雪解け水)といった不確定さをもっています。そのため、ベストな水を選ぶには飲料用水を購入すべき、と思います。が、水道水では(炒飯用の)美味しいお米が炊けないという訳ではないでしょう。
11.つまりどんなお米、水がいいのか?
さてさて、長々々と書いてまいりましたが、結局どんなお米と水がベストなのでしょうか?
まとめて書いてみますと、
「炒飯のお米選び」
2.お米の種類は?
→”ジャポニカ米”の”日本米”
3.脱穀の割合は?
→うるち米
→精白米
4.お米のブランドは?
→”ササキニシキ”
5.新米か古米か ?
→新米に近いお米
6.育った場所は?
→田んぼで窒素肥料をあまり使わずに作られたお米を選ぶ
7.収穫前の天候は?
→お米のブランドに加え、育てられた地域の今年度の天候を考慮したお米選び
8.保存方法は?
→高温多湿を避ける、空気に触れさせない、古い米と混ぜない
「炒飯のご飯の水選び」
9.pH(酸性・アルカリ性)は?
→弱アルカリ性
10.硬度(ミネラルの量)は?
→できるだけ硬度の低い軟水
の以上が、定義より選び抜かれたお米、水です!!
ここまで私のつたない文章を読んでくださった方は、相当な根気強さがあるのでしょう。ありがたいです。
科学的な炒飯レシピについて、今回は「米編①:米と水選び」でした。
次の記事では「米編②:炊飯の仕方」です!
次も多分長文になってしまうと思いますが、何とか簡潔にしたいと思いますので、読んで頂けると幸いです。
米編が一番長いので今後は読みやすくなっていくはずです。
今後は「卵編」「油編」「醤油編」「調理編」に移っていく予定です!
読んでくださり本当にありがとうございました!
次の記事も是非!!
【長文の炒飯レシピ記事:「2017年最高の炒飯3」この1年間の最終形態】
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